2020-01-01から1年間の記事一覧
僕には桜の樹木が見える。それは色んな人の頭の上にあるのだけれど、まだ蕾の人やそもそも芽吹いてもいないものまである。環境や四季などには全く作用されず、一切干渉ができなくて、可視化できているのは自分だけ。 不思議な気分だった。今だって大きな街の…
……ところで。 哀と、愛は、読みが同じだけじゃないだと思う。 この二つに"涙"は付き物……背中合わせの感情で、きっとこの景色に終点はない。 愛は欲しいものだけど、哀は消え去って欲しい感情だ。 だって、何が悲しいのかさえ忘れてしまいそうになったらそれ…
無色の記憶/ 人を殺した。 コンクリートに広がる紅は美しかった。煙草の灰ですら染めるその純然さは、吸血鬼が血に耽美的な姿勢を持つ理由が分かる。 けれど不思議だ。 あれだけ色褪せた世界が一瞬で別の色に塗り替わるなんて。 思ったよりもあっさりで、一…
外の空気は美味しい。あぁ、勘違いしないで欲しいんだが、この美味しいとは多様な味覚を指す言葉じゃない。 澄んでるとか綺麗だとか、そういうのを示している。 率直に言うと今自分は三日振りに外に出た。ちなみに自分はそれは時間を遡ること……なんて小説家…
深い深い闇に覆われた夜のことだった。 「ヴォルフ?」 「ネ、ネフィリアさん……」 ヴォルフと呼ばれた青年は、自分よりも短躯な少女であるネフィリアを前に後ずさる。 いつもより落ち着きのない彼を前に、ネフィリアは何かを勘繰ると不服そうに頬を膨らませ…